おやすみ百貨店

12

Mar.2015

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オレンジガール

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こんばんは、明日香です。

火曜日・なっちゃんのDVDレビューに続いて、
私も最近読み終えた本のご紹介をさせてください。

本のタイトルは「オレンジガール」。

この本は「皆さんに読んでいただきたい!」という気持ちと同時に
「内容を知ってもらいたい」という想いが強いので
レビューではなくてネタばらしも含め書いていきますね。
なので、絶対読んでみたい!という方は、今回の記事はひとまず置いといて、
ぜひお読みになった後に、ご自身の感想と照らし合わせてもらえれば嬉しいです。


さて、ポップなタイトル、ポップな表紙とは裏腹に
この本のテーマは「生と死」であります。
随所に哲学的な考えも散りばめられています。
と聞けばなんとなく作者がわかりそうなもので、
作者は以前クリスマスの時にご紹介した本「アドヴェント・カレンダー」と同じく、
ノルウェーの小説家ヨースタイン・ゴルデル。
高校教師として哲学と文学を教えていた経歴を持つ作家さんです。

昨日3月11日は日本人なら否が応でも「命」について考えさせられる日。
広い宇宙に生まれ落ちた、小さな命の儚さと尊厳を
この本と一緒に読み解いていきたいと思います。


物語の主人公は15歳のゲオルグ少年。
そしてもう1人の主人公は彼が4歳の時に亡くなってしまった父親。

ある日とつぜん、ゲオルグはすでに去って久しい父親から、
一通の長い手紙を受け取ります。
その手紙に書かれていたのは、
父親がどうしても息子にたずねたい質問があるということ、
そして若かりし父親と「オレンジガール」との恋の話、
それからハッブル望遠鏡のこと。

ゲオルグはもうほとんど覚えていない父親からの手紙を読み進めます。

ある日、たくさんのオレンジが入った大きな紙袋を持った女性
「オレンジガール」に恋をした父親。
名前も居場所もしらない彼女を彼は必死に探します。

このあたりはラブストーリーとして十分面白く、
魅力的なオレンジガールに私もドキドキ。

2人の恋の話のほとんど、そしてこの本のほとんどが、
2人の「出会い」について語られています。

それがいかに素晴らしく、運命的な出会いだったか。

中盤でゲオルグはその「オレンジガール」が自分の母親であることに気づきます。
自分の父親と母親がどうやって出会ったのか、
彼は11年前に亡くなった父親の手紙で知ることになるのです。

やっと再会することができ、ゲオルグが生まれ、
幸福の絶頂だった父親に悲しい現実が訪れます。
彼は病気になり、自分の余命がもう長くないことを悟り、
そして未来の大きくなった息子にあて手紙を書くのです。

さて、ここまで書いたら「お、息子に手紙で何か想いを託す、いいお話か」と
思いますよね。私も思いました。

でも父親が手紙で書きたかったことは「想いを託す」ことではなく、
さきほど書いたように「たずねたい質問がある」ということ。

父親の質問はこうです。

「きみがこの惑星に生まれるか生まれないか、自分で選ぶことができたら、
 きみは一体どっちを選ぶ?
 この世に生まれることを選んだら、いつかまたすべてをあとに残して
 この世から去らなければいけない。
 幸福に酔いしれている真っ最中にいきなり地上から連れ去られるかもしれない。
 それでも生まれることを選ぶかい?」

病気でもうすぐ命がなくなる父親は
「自分ならば、きっとすべての申し出を断る」と手紙に綴ります。
そして「もし息子も同じ考えなら、この世に誕生させてしまったことを悔いる」と。

これ、自分の父親に言われたらそうとうショックです。
ただ、これから起こる楽しいことを全て突然取り上げられてしまった
父親の気持ちを思えばわからなくもありません

父親(すなわち作者)がオレンジガールとの出会いにかなりのページを割いたのは、
この突然来る圧倒的な不幸を際立たせるためであり、
運命的に出会った2人が、あっさりとまた運命によって引き離される残酷さを
伝えるためなんですね。

けれど、このお話の本質はここからです。

「ただし、もしきみが短期間でもこの世を生きることを選んだとすれば、
 そのときはきみの父親になるわたしもこの世に生まれてこないわけにはいかなくなる。
 わたしが辞退することは許されなくなる。
 だから質問にこたえてほしい。
 直接わたしにその答えを伝えることはできないが、
 きみはその人生を通して、わたしに答えることができる」

こんなに苦しいなら生まれてこなければ良かった、
としか考えれない、死が目前に迫った父親にとって、
自分の息子が生を授かることを選んでくれることは
自分の命が無駄ではなかったという「希望」になるのです。
と同時に、息子が幸せな人生を歩む事を応援するための質問でもあると思うのです。


はじめに少し書いたように、この物語には「ハッブル望遠鏡」が
たびたび登場します。
ハッブル望遠鏡は「宇宙の目」と表現され、
宇宙は150億年かけて大事な感覚器官を持つことができた、
というしびれる一文もでてきます。

広大な宇宙の中で存在する人間、
果てしない時間の中で受け継がれていく命、
個々に細分化された現代の考えとは違い、
全体の中で自分たちが生きているということを
この本は認識させてくれます。


さて、ゲオルグは物語の最後に質問に対してきちんと答えを出します。
それはあえて書かないでおきますが、
本の最後、私たち読者に向けたアドバイスを見れば
それはどっちか一目瞭然かもしれません。

「きみの両親はどんなふうに出会ったのかを一度たずねてみればいい。
 話の最後のできごとがちょっと違っていただけで、
 きみはこの世に生まれてこなかったんだから!
 人生は当たりくじの数字だけが発表されるとてつもなく大きなロトくじ。
 この本を読んでいるきみはそのくじに当たった人だ。Lucky you!」


ゲオルグのアドバイスのように、自分のルーツを知ることは
自分の存在を肯定する大きな力になると思います。

オレンジガール、物語としての面白さというよりは、
その裏にあるいろんなことを考えながら読み進めていくような本です。
きっと読むたびに新たな発見があるでしょう。
興味のある方はぜひじっくり読んでみてくださいね。

それではこの世に生を授かりしラッキーな皆さん、おやすみなさい!

※本日は字ばかりで長くなりすみません。


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ヨースタイン・ゴルデル(2003)オレンジガール
日本放送出版協会


WRITER

明日香


副編集長
カフェナナツモリオーナー



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おやすみ百貨店は、カクウの百貨店。
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がコンセプト。 アメヒヨメンバーがセレクトした、かわいい雑貨や、使いやすい日用品、ちょっと変な物まで、 気になる商品ならノージャンルで紹介してゆきます。
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